高齢化社会においては、年金・医療・介護など様々な点で問題が議論されていますが、いつの時代にも付きまとうのが「相続」です。
一昔前の相続財産と言えば、「現預金」か「居住用不動産」がほとんどでしたが、昨今は多様な投資商品のほか、仮装通貨や投資用不動産などが一般世帯に浸透しており、非常に複雑化しています。
また、「長男が後継ぎ」という構造も崩壊しており、法定相続・遺言に関するトラブルも増加しています。
相続税や贈与税に関しても、特定の相続人が著しく不利にならないように様々な「優遇税制」が設けられていますが、これも複雑で適切に利用するには知識や専門家からの助言が必要です。
相続や相続に関わる税金については、「弁護士」や「税理士」が専門家として位置づけられていますが、相談するにも多額の費用が必要です。
そのため、そういった専門家への橋渡しとなるコンサルタントや、あなた自身が相続に関する知識を身に付けることが重要になってきます。
今回、そのようなニーズに応える「相続検定2級」をご紹介します。
目次
2019年に新設された検定。第1回10月20日(日)実施!
「相続検定」をご存知でしょうか?
これまでにも「相続アドバイザー」などの資格はありましたが、「相続検定」と聞いたことがある方は少ないのではないでしょうか。
2019年に新設された検定で、2級は2019年10月20日(日)に記念すべき第1回試験が実施されました。
合格率は?勉強時間はどれくらい必要?
第1回の合格率は35.6%でした。
初回なので、この結果を踏まえて今後の難易度は調整されていくものと思われますが、思ったより低めです。
第1回の試験を受験しようとする方なので、「記念受験」はそれほど多くないことが想定されますね。
私も公式テキストを読みましたが、FPなどで出てくる「相続」よりは深い知識が問われていました。
平均すると、1日1時間の学習で3ヶ月程度の勉強時間が必要であると分析します。
資格の位置づけ
相続検定2級は、一般社団法人日本金融人材育成協会が実施する民間検定です。
当協会は、2017年7月に資格関連予備校最大手の「TAC株式会社」の全額拠出により設立され、同年から「企業経営アドバイザー」試験を実施しています。
<企業経営アドバイザーについてはコチラ↓>
当検定では、金融業界・不動産業界・ファイナンシャルプランナーなどの専門家はもちろんのこと、ご家族や親族の相続問題を円満に解決し、不必要な相続税・贈与税などの税金を負担しないための「相続」に関する知識を学習することができます。
あくまでも民間検定ですので、業務独占資格ではありませんし、まだまだ知名度も低い検定です。
そのため「保有しているだけで社内外の評価に影響する」といったメリットは薄いですが、ファイナンシャルプランナーや税理士に必要な知識のほか、ご自身の人生に役立つ知識を得られる検定ですので、「スキルアップ」として活用するのが良いでしょう。
試験の概要・申込 試験の概要・申込は検定公式HPをご覧ください。
検定公式HP:https://www.kigyou-keiei.jp/lp/souzoku_kentei/
試験内容は?ファイナンシャルプランナーとの違いは?
試験範囲
引用IRL:https://www.kigyou-keiei.jp/lp/souzoku_kentei/(検定公式HP)
ファイナンシャルプランナーとの違い
個人向けのコンサルティングに関する資格では、「ファイナンシャルプラン技能検定」(特定非営利活動法人日本FP協会・一般社団法人金融財政事情研究会)があります。
FP検定と言えば、年間受験者数が数万人を超える大人気資格です。
<FP技能検定についてはコチラ↓>
ファイナンシャルプランナーは、個人のライフイベントにおける「お金」にまつわる相談業務を生業とした職業です。その相談範囲は、資産運用から不動産購入、相続まで多岐に渡ります。
そのためFP検定では、「相続」だけでなく、社会保障制度・保険・金融資産運用・不動産・税金など、幅広い分野が出題されます。
一方で相続検定では、相続に特化した学習が可能です。
信託銀行などの金融業界にお勤めの方や、相続に特化した不動産コンサルティングを行う不動産屋など、いまの業務に付加価値を付けたい方には最適な検定です。
また、ファイナンシャルプランナーのように仕事に活かす目的ではなく、ご自身のご家族・親族の相続対策として学習することにも適しています。
税理士へのステップアップとして受験!
「相続」に関する専門家といえば「税理士」です。
相続時・生前贈与時に発生する相続税・贈与税の申告業務は税理士の独占業務となっています。
税理士にも専門分野・得意分野があり、中でも「相続税申告業務」は報酬が高い業務と言われています。それは一度の申告にかかる納税額が高額になるためです。当然その分、申告ミスによる賠償額も大きいのも特徴です。
そのため、相続を専門にする税理士を志す前に、ご自身の適性をしっかりと把握することが大切ですす。
しかし、税理士試験は全5科目に合格しなければならず、最低でも2~3年は掛かると言われています。
「相続税」を選択し勉強を始めてから「やっぱり合わない…」と他科目を勉強するのは時間的にも費用的にも無駄です。
まずは「相続検定2級」で相続に関する適性を図り、「『やはり相続がやりたい!』と思えたら税理士の学習をはじめる」というのも一つの手段です。
相続検定2級の学習時間は1日1時間で2~3ヶ月程度です。
仮に「やはり相続はちがう」となっても、相続検定で学習した時間は決して長すぎず、知識は決して無駄にはならないでしょう。
相続検定2級の勉強方法は?
相続検定2級は、TACにて講座を開講しています。通学・通信対応していますので、ご活用ください。
相続検定2級って役に立つの?どんな業務?
信託銀行員には必須知識!信頼のある相談業務に活用
信託銀行の業務の中に、「遺言手続きサポート」「相続手続きサポート」があります。
遺言・相続手続きには、公証人・弁護士・税理士など様々な登場人物が出てきます。相続などに関する知識がない一般の方ですと、いつどこで誰に相談すべきか判断することは困難です。
信託銀行ではそういった方々向けに各種手続きを円滑におこなうためのコーディネータの役割を果たします。
もちろん最終的には各専門家へのつなぎの役割になりますが、コーディネータとして一通りの知識は必要になります。
「相続検定2級」の学習内容は、遺言や遺産分割、相続税・贈与税など一連の相談業務を行う上で必要な知識を網羅していますので、信頼のある「相続コーディネータ」として活躍するのに適しています。
ファイナンシャルプランナーの必須スキル!
ファイナンシャルプランナーが顧客のライフプランニングを行う際に、
相談者がご家族・親族からいくらの相続を受けるのか
またどれくらいの遺産を配偶者・子供に残せるのか
は重要な相談内容になります。
知識面はFP技能検定と重複する面も多いですが、計算問題はFP技能検定よりも多様なパターンを学習できます。
また、FP技能検定では、1つの試験で計算問題は1・2問と限られますが、相続検定では複数経験できると想像されます。
しっかりと相続税・贈与税の計算を習得したい方には非常におススメです。
強いて言えば、FP2級を合格した方は、まだ知識が残っているうちに「相続検定」を受験すると効率的ですので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
ワンランク上の不動産の営業マンになるために!
不動産の贈与・相続には様々な優遇税制が存在します。
そのため、「相続対策」として売買などの取引が発生しやすいのが不動産の特徴です。
一般の不動産取引の営業とは異なり、「土地や家の知識があればよい」ということでは済みません。
あらゆる税制を把握し、遺言や相続・遺産分割手続きなどの流れを把握し、適切かつ円滑な不動産取引を実現しなければ、依頼者に損害を与え、トラブルに発展することもあります。
時には税理士などの専門家とのコミュニケーションも必要ですし、役所との連絡窓口になることもあります。
信託銀行と同様に相続のトータルコーディネートに近い役割になるのです。
非常に大変な業務ですが、その先には高額な取引があり、かなりの報酬が期待できるでしょう。
相続トラブルは年々増加!未然に防ぐための知識を習得!
冒頭でも書きましたが、相続トラブルは年々増加し、かつ複雑化しています。
相続においては多額のお金が絡みますので、容易に済ませることのできない問題です。
しかしその都度専門家に依頼していては費用倒れしてしまいます。ある程度は自分たちで解決することも重要です。
また生前贈与や事業継承、生命保険活用など、タイミングを逸して大損してしまうこともあります。
当事者一人一人が社会や法律の仕組みを理解し、活用することで損のない、円滑かつ円満な相続が実現できるのです。
また、自身のライフプランニングにおいて、
「いくら相続を受けることができるのか」
「いくら税金を納める必要があるのか」
「いくら子供に資産を残すことができるのか」
把握することは非常に重要です。
その知識を得る手段として、「相続検定2級」は非常におススメです。
おわりに ~難易度・勉強時間の予測~
いかがでしたでしょうか。
今回は2019年10月に第1回試験を迎えた「相続検定2級」をご紹介しました。
まだ実施履歴が少ないため難易度は不明ですが、TACの情報やテキストを見る限り、FP3級程度の勉強時間で合格可能かと思います。
計算問題もあるため、ある程度机に向かう時間の確保も必要ですが、知識面は通学・通勤時間や昼休みなどの空き時間をうまく活用していきましょう。
また、同時に同協会が実施する「年金検定2級」もおススメですので、ぜひ検討してみてください。