宅建・農地法を10分解説でマスター!「法令上の制限」対策③

 

 宅建試験において「法令上の制限」は8問程度出題されます
 その中で、「農地法」は毎年1問出題されています

 農地法は全69条からなる法律ですが、過去問から見るに宅建試験において出題が予想される1~5条です。
 そのため、無作為にテキストを読むより、直接条文と照らしながら理解したほうが近道です。

 そこで今回、条文とともに、 

10分で農地法をマスターするための解説

 

 を作成しました。ぜひ10分で読んでみてください!

※ 本文内での条文の引用個所は、「より深く知りたい!」という方のみ読んでください。
  試験問題正解のための最低限であれば、引用後の解説のみ読んでいただければ十分です。

 

 

目次

「農地法」10秒まとめ

① 目的:農業は大事だから、農地がなくなったり生産者が減ったりしないように守りましょう!
② 対象:農地または採草放牧地
③ 方法:農地の権利移動には農業委員会の許可
     農地の転用には都道府県知事の許可が必要
④ 罰則:あります!

 

 

第1条 「農地法」の目的は?(50秒で流し読み)

<引用>
(目的)
第一条 この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

 
 昨今の我が国では、農家の後継ぎ問題が深刻化しています
 農業は年中無休なうえ、肉体労働で負担も大きく、災害などによって収入がまったくなくなってしまうリスクさえあります。
 しかし、
農業をやめてしまう農家が増えると、日本の食料難に発展してしまいます

 そういった状況にならないよう、農地・採草牧草地の権利移転(売買・譲渡など)や転用(農地を潰す)を制限するために、農地法があります

 

 

第2条 「農地・採草牧草地」って何?(30秒でサクッと)

 

<引用(抜粋)>
(定義)
第二条 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。

 

 厳密ではありませんが、宅建試験対策の理解としては、
  

 農地:    畑や田んぼ
 採草放牧地: 牧場

 

 イメージしておいてください。

 

第3条 権利移動の許可とは?(2分でポイントを押さえる)

<引用(抜粋)>
(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)

第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

 
 要は、農地などの所有権が変わる場合には、農業委員会の許可が必要ということです。

 

「権利移動」とは?(許可が必要なとき)

 所有権移転・借地権などの設定時(抵当権除く)

 

【例外】
 ① 相続・遺産分割による権利移動(届出は必要)
 ② 離婚による財産分与
 ③ 国・都道府県への権利移動
 ④ 土地収用法による権利移動

 

許可をする人

 農業委員会

 

 

 

第4条 農地転用の許可とは?(1分30秒でポイントを押さえる)

<引用(抜粋)>
(農地の転用の制限)
第四条 農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。

 
 要は、農地を農地以外(住宅とか)に変更するには、都道府県知事の許可が必要ということです。
 ※ 4条の農地転用については、「採草放牧地」は対象外です。

 

「農地の転用」とは?(許可が必要なとき)

 農地を農地以外の目的に変更するとき(一時的な転用も含む)

 

【例外】
 ① 国・都道府県が、道路や地域に役立つ施設等に転用するとき
 ② 市区町村が道路・水路・堤防などに転用するとき
 ③ 農業用施設に転用するとき(2a未満)
 ④ 土地収用法による転用
 ⑤ 市街化区域内の農地を、あらかじめ農業委員会に届け出て転用するとき

 

許可をする人

 農業委員会経由で都道府県知事(4ha超は農林水産大臣) ※2016年施行の法改正によって、面積にかかわらず都道府県知事の許可になりました。

 

 

第5条 権利移動+農地転用の許可とは?(1分30秒でポイントを押さえる)

<引用(抜粋)>
(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
第五条 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

 
 要は、農地を農地以外に変更して権利移動するには、都道府県知事の許可が必要ということです。
 ※ 5条の転用のための権利移動については、「採草放牧地」を含みます。

 

「権利移動+農地の転用」とは?(許可が必要なとき)

 所有権移転・借地権などの設定時(抵当権除く)
 +農地を農地以外の目的に変更するとき(一時的な転用も含む)

 

【例外】
 ① 国・都道府県が、道路や地域に役立つ施設等に転用するとき
 ② 市区町村が道路・水路・堤防などに転用するとき
 ③ 農業用施設に転用するとき(2a未満)
 ④ 土地収用法による転用
 ⑤ 市街化区域内の農地を、あらかじめ農業委員会に届け出て転用するとき
 (第4条農地の転用と同様です)

 

 

許可をする人

 農業委員会経由で都道府県知事(4ha超は農林水産大臣) ※2016年施行の法改正によって、面積にかかわらず都道府県知事の許可になりました。

 

 

許可を受けなかった時の罰則・効力・是正(1分30秒でポイントを押さえる)

効力・是正

必要なのに許可を受けずに権利移動・農地転用した場合は以下のようになります。

 ① 権利移動:契約無効
 ② 農地転用:工事停止・原状回復

つまり、

第3条 権利移動 → 契約無効
第4条 農地転用 → 工事停止・原状回復
第5条 権利移動+農地転用 → 契約無効+工事停止・原状回復

 

 

となります。

 

 

罰則

3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金

 

 

過去問でおさらい!(1問1分)

2017年度過去問

次の中で正しいのはどれか。

1.市街化区域内の農地を耕作のために借り入れる場合、あらかじめ農業委員会に届出をすれば、法第3条第1項の許可を受ける必要はない。

2.市街化調整区域内の4ヘクタールを超える農地について、これを転用するために所有権を取得する場合、農林水産大臣の許可を受ける必要がある。

3.銀行から500万円を借り入れるために農地に抵当権を設定する場合、法第3条第1項又は第5条第1項の許可を受ける必要がある。

4.相続により農地の所有権を取得した者は、遅滞なく、その農地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。

 

<解答・解説>
1.誤り。賃借権(農地を借りる権利)も「権利移動」の対象なので、許可は必要です。
2.誤り。2016年4月施行の法改正によって4ha縛りはなくなりました
3.誤り。抵当権は「権利移動」の対象外でした。
4.正しい。相続による権利移動の場合は、例外として農業委員会への届出のみでOK。

 

 

2016年度過去問

次の中で正しいのはどれか。

1.相続により農地を取得する場合は、法第3条第1項の許可を要しないが、相続人に該当しない者に対する特定遺贈により農地を取得する場合も、同項の許可を受ける必要はない。

2.法第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。

3.法第3条第1項又は法第5条第1項の許可が必要な農地の売買について、これらの許可を受けずに売買契約を締結しても、その所有権の移転の効力は生じない。

4.農業者が、市街化調整区域内の耕作しておらず遊休化している自己の農地を、自己の住宅用地に転用する場合、あらかじめ農業委員会へ届出をすれば、法第4条第1項の許可を受ける必要がない。

 

<解答・解説>
1.誤り。少し難しいですが、「特定遺贈」は許可不要の例外に該当しません。「包括遺贈」は許可不要です。
2.誤り。「所有」ではなく「借り入れ」なので問題ありません。
3.正しい。権利移動に必要な許可を受けなかった場合、契約は無効です。
4.誤り。農地から住宅への変更なのでもちろん許可が必要です。遊休かどうかは関係ありません

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宅建試験 法令上の制限解説

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