不動産鑑定士試験の難易度は?勉強時間は?どんな仕事?独立できる?
目次
不動産鑑定士試験の難易度は?
他の試験と比較した難易度
不動産鑑定士 ★★★★★★★★★☆ 1日3時間程度で2~3年間
【参考】
測量士補試験 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で1~3ヶ月
日商簿記検定3級 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で1~3ヶ月
賃貸不動産経営管理士 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で1~3ヶ月
DCプランナー2級 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で2~4ヶ月
日商簿記検定2級 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で3~6ヶ月
FP2級 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で3~6ヶ月
宅地建物取引士(宅建) ★★★★☆☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で3~9ヶ月
管理業務主任者 ★★★★☆☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で3~9ヶ月
マンション管理士 ★★★★★☆☆☆☆☆ 1日1時間程度で6ヶ月~1年間
中小企業診断士 ★★★★★★☆☆☆☆ 1日2時間程度で6ヶ月~1年間
行政書士 ★★★★★★☆☆☆☆ 1日2時間程度で6ヶ月~1年間
社会保険労務士 ★★★★★★★☆☆☆ 1日3時間程度で6ヶ月~1年間
土地家屋調査士 ★★★★★★★★☆☆ 1日3時間程度で1~2年間
税理士・公認会計士 ★★★★★★★★★★ 1日3時間程度で…数年!!
過去の合格率・合格者数推移
不動産鑑定士試験は、受験資格がなく誰でも受けられる試験ですが、3大難関国家資格と称される「公認会計士」「司法書士」と比較して、受検者数は1~2割程度を推移しています。
これは公認会計士・司法書士と比べると、独占業務の業界全体のニーズが少ないこと、それ故に独占業務を活用できる就職先が少ないことに起因しています。
不動産鑑定士試験科目
(1)短答式試験
① 午前:不動産に関する行政法規
② 午後:不動産の鑑定評価に関する理論
(2)論文式試験
① 1日目午前:民法
② 1日目午後:経済学
③ 2日目午前:会計学
④ 2日目午後:不動産の鑑定評価に関する理論
⑤ 3日目午前:不動産の鑑定評価に関する理論
⑤ 3日目午前:不動産の鑑定評価に関する理論(演習)
不動産鑑定士ってどんな資格?
資格の位置づけ
「不動産鑑定士」は不動産の鑑定評価に関する法律に基づく国家資格です。
限りある国土を「適正な取引」に導き、「適正な土地利用」を実現するため、「地価の評価」「不動産の有効活用」をおこなうのが「不動産鑑定士」の役割です。
私たちの暮らしとの関連で見ると、国や都道府県が発表している、
① 路線価
② 固定資産税評価額
③ 公示地価
の算定も不動産鑑定士が依頼を受けておこないます。
また、一般企業の財務状況を時価で判断するために保有する不動産の評価をおこなったり、売買などの取引を行う際に、参考価格を算定するための評価をおこなうことも、不動産鑑定士の役割です。
これらの「不動産鑑定業務」は不動産鑑定士のみに認められた独占業務です。そのため、不動産鑑定士の資格を持たないものがこれをおこなうと、罰則があります。
また、独占業務ではありませんが、不動産鑑定の知識・経験を生かした「不動産活用に関するコンサルタント」としての活躍の場も存在します。
まさに「不動産のスペシャリスト」として「不動産鑑定士」は位置づけられています。
不動産鑑定士にはどうやったらなれるの?合格後に長い道のり…
不動産鑑定士になるには、以下のとおりです。
(1)不動産鑑定士試験に合格する
(2)実務修習を修了する(1年コースまたは2年コースから選択)
① 講義(16科目)
② 基本演習(計10日間で4科目)
③ 実地演習(実際に存在する不動産を対象に、全13類型の「鑑定評価報告書」を作成)
不動産鑑定士試験の大きな特徴として、この「実務修習」があります。
他の試験ですと、試験合格後は1~2日程度の講習等で資格登録ができることが多いのですが、不動産鑑定士は「1~2年要する」という関門が待ち受けているのです。
いまの仕事を続けながら実務修習を修了できるように2年コースも用意されてはいますが、苦労して合格した後に長すぎる道のりです。
これもまた不動産鑑定士を志す人が少ない(受験者数が少ない)要因の一つではないでしょうか。
不動産鑑定士試験の受験資格とは?
受験資格はありません。
どなたでも受験できます。
不動産鑑定士って役に立つの?その業務とは?
不動産鑑定士の業務は、
不動産の鑑定評価とその付随業務
です。
非常に簡潔に言ってしまうと、最終的には依頼主に対し、
という評価を、その根拠と一緒に提示することが「鑑定評価」です。
鑑定業務の流れ
鑑定評価とはどのような流れで行われるのでしょうか。
(1)鑑定評価の基準・材料
よく不動産屋(宅建士)が、
という説明をすることがあります。
これは、不動産鑑定の手法の一つである「取引事例比較法」を極めて簡易的に行っているもので、購入価格や売却価格の参考にする程度で、対外的に効力があるものではありません。
不動産鑑定士による鑑定は、「取引事例比較法」で使用されるいわゆる「相場」を用いた評価だけでなく、様々な要因を考慮して評価します。
これは、「不動産鑑定基準」によって細かく定められています。
以下はその一例です。
<不動産鑑定評価の材料例>
① 相場
② 社会・経済情勢
③ 対象エリアの開発状況、計画
④ 対象エリアの災害マップ等
⑤ 対象不動産が影響を受ける法令上の制限等
⑥ 対象不動産の形質・面積・立地
(2)鑑定評価の作業・業務内容
鑑定評価は、現物不動産を対象に行うわけですから、実地調査が基本になります。
日本不動産鑑定士協会連合会が紹介している例をもとに見ていきましょう。
<不動産鑑定評価業務の作業例>
① 対象不動産の実地調査
② 取引事例の収集・調査
③ 法務局・役所調査
④ 地元不動産業者等へのヒアリング
⑤ 建築士など他分野の専門家へのヒアリング
⑥ 収集した情報の分析・検討
⑦ 鑑定評価書・報告書の作成
このように1件の鑑定評価に対する作業は多岐に渡ります。
一つ一つの作業にとても時間がかかりますので、調査開始から評価完了まで1日2日ではできません。
不動産鑑定業務にかかる時間に関するアンケート結果は以下の通りです。
<不動産鑑定業務にかかる時間>
(1)土地のみの評価
① 低層住宅用地(戸建・アパート用地):約41時間(約6日)
② マンション用地:約49時間(約7日)
(2)土地・建物を一体評価
① 小規模ビル:約53時間(約7.6日)
② 大規模オフィスビル:約61時間(約8.7日)
不動産鑑定を業として行っている不動産鑑定士(不動産鑑定士事務所など)の場合には、まず「営業活動」というフェーズが入ってきます。
営業活動をしながら、すでに依頼を受託している鑑定業務をするわけですから、かなりのハードワークになるでしょう。
鑑定業務でも営業活動でも外回りをするため、体力が求められる仕事でもあります。
参考URL:不動産鑑定士とは?(日本不動産鑑定士協会連合会HP)
国・都道府県からの依頼業務
不動産鑑定士の強みの一つとして、
国や都道府県といった公共機関からの依頼がある
ということが挙げられます。
① 路線価
② 固定資産税評価額
③ 公示地価
前述しましたが、国や都道府県が、「公正な不動産取引」や「課税の公平性」を目的として、定期的に公表する数値があります。
これらを算定するのも不動産鑑定士の役割です。
不動産会社内の「不動産鑑定部門」に従事する場合
不動産鑑定士の就職先として、不動産鑑定士協会に所属する以外に
「不動産会社内の不動産鑑定部門に配属される」
という選択肢があります。
不動産会社で「鑑定士」が必要になるケースには以下が考えられます。
① 不動産の売買を業としている会社で、購入・売却価格を算定する
② 保有する不動産の売却時期に関する経営判断の材料を提供する
③ 減損会計基準に基づく時価評価を保有不動産に適用する
もちろん、これらの業務は必要なときに外部の不動産鑑定士に依頼することもできます。
しかし、その場合には多額のコストがかかります。
内部の不動産鑑定士の場合には、不動産鑑定士というプレミアムはありますが、一般的な給与水準で済むため、企業にとってはトータルでコスト削減につながることがあります。
また、案件によっては「参考価格が知りたいだけだから、そこまできっちりしたレポートは必要ない」というケースが多くあります。
そういった融通を利かせられるのも、内部不動産鑑定士のメリットです。
不動産鑑定士は独立できる?
もちろん個人の実力次第ですが、不動産鑑定士は独立することが可能な資格です。
不動産鑑定士事務所を開業し、国や都道府県からの受注を受けたり、企業と提携すれば、安定した案件が手に入ります。
また、コネクションがあれば、フリーランスとして柔軟な対応をすることも可能です。企業内鑑定士を雇うほどの需要がない不動産会社などに営業をかけ、年数回の案件を獲得することから始めるのも一つの手段です。
加えて、不動産鑑定の知識・経験を活かして、「不動産利活用に関するコンサルタント」として活躍することも可能です。
「不動産鑑定業務」で培ったコネクションを使って、コンサルティングのニーズを引き出せば、一挙両得で案件が舞い込んでくることも考えられます。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
不動産鑑定士は、試験合格も困難なうえ、その後の道のりも長い、ハードルの高い資格です。
しかし、その先には「不動産のスペシャリスト」として、幅広い活躍の場が用意されています。
勉強開始から不動産鑑定士として従事できるまで、早くても3年はかかるこの資格。
しっかりと取得後の将来設計をしたうえで受験することをおススメします。
まずは、参考に不動産鑑定士の仕事に関する書籍を読んでイメージを膨らませましょう。
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