金融庁による「老後2,000万円問題」以降、年金に関する社会の関心が高まってきました。
賛否両論ありましたが、そもそもの「年金制度」に関する知識の有無で、あの報告書の「本質」部分を理解できるかが変わってきます。
今回は、多くの方が学習せずにいる「年金」に関する検定をご紹介します。
金融業界やファイナンシャルプランナーはもちろん、一般の方が自身のライフプランを形成することにも非常に役に立つ検定「年金検定」です。
目次
2019年に新設された検定。第1回10月20日(日)実施!
「年金検定」をご存知でしょうか?
資格マニアでも知っている方は多くないと思います。
それもそのはず、2019年に新設された検定で、2級は2019年10月20日(日)に記念すべき第1回試験が実施されました。
合格率は?勉強時間はどれくらい必要?
第1回の合格率は49.7%でした。
初回なので、この結果を踏まえて今後の難易度は調整されていくものと思われますが、それほど難易度は高くなかったようです。
第1回の試験を受験しようとする方なので、「記念受験」はそれほど多くないことが想定されますね。
私も公式テキストを読みましたが、DCプランナー検定とそれほど難易度は変わらないようなので、他資格で年金に関する学習経験があった方にとっては、それほど苦にはならないでしょう。
平均すると、学習経験者は1日1時間の学習で1~2ヶ月程度、未学習者は1日1時間の学習で3~6ヶ月程度の勉強時間が必要であると分析します。
資格の位置づけ
年金検定2級は、一般社団法人日本金融人材育成協会が実施する民間検定です。
当協会は、2017年7月に資格関連予備校最大手の「TAC株式会社」の全額拠出により設立され、同年から「企業経営アドバイザー」試験を実施しています。
<企業経営アドバイザーについてはコチラ↓>
当検定では、金融業界・人事部門・ファイナンシャルプランナーなどの専門家はもちろんのこと、ご自身やご家族のライフプランを策定するうえで欠かせない「年金制度」「社会保障制度」の仕組みを学習することができます。
後ほど詳細はご説明しますが、年金検定2級では「年金制度」「社会保障制度」に関する基礎知識はもちろんですが、
①他の検定より精緻な受給額の計算
②年金受給を行うための裁定請求手続き
③離婚時の年金分割 など
より実務に近いポイントを学習することができることが特長です。
あくまでも民間検定ですので、業務独占資格ではありませんし、まだまだ知名度も低い検定です。
そのため「保有しているだけで社内外の評価に影響する」といったメリットは薄いですが、ご自身の業務に直結する知識を得られる検定ですので、「スキルアップ」として活用するのが良いでしょう。
試験の概要・申込
試験の概要・申込は検定公式HPをご覧ください。
検定公式HP:https://www.kigyou-keiei.jp/lp/nenkin_kentei/
試験内容は?DCプランナーとの違いは?
試験範囲
※TAC株式会社のテキストを参考にまとめています。
DCプランナーとの違い
年金・社会保障制度を取り扱った資格には、他に「DCプランナー」(日本商工会議所・金融財政事情研究会)があります。
私も2015年に2・3級を取得しましたが、こちらも大変おススメの資格です。
<DCプランナーについてはコチラ↓>
年金検定2級とDCプランナー2級の試験内容のバランスを図示すると以下のようになると考えています。
年金検定は、公的年金(国民年金・厚生年金)をより深く、かつ中心にして、必要な関連事項を学習していきます。
また、公的年金については、保険料や受給額といった内側の知識だけでなく、受給申請手続きや離婚時の年金分割などより実務に即した内容を学習できることが特長です。
一方でDCプランナーは、確定拠出年金(DC)に関する試験ではあるものの、付随する「公的年金」「投資」「ライフプランニング等」と比重がほとんど変わりません。
FP試験と同様に、幅広い分野を学習できることが特長です。
ダブル受験がおススメ!年金検定に向いてる人・DCプランナーに向いてる人
年金検定とDCプランナーは試験範囲がかなり重複しているため、せっかく勉強したのであれば同時期にどちらも受験すべきだと思います。
公的年金について深く学習できる年金検定と、関連分野について幅広く学習できるDCプランナーはとても相性がよく、スキルアップにとても役立つでしょう。
「どちらか」ということであれば、以下の基準を参考にしていただけると良いと思います。
<年金検定に向いてる人>
①中高年向けのコンサルタント、ファイナンシャルプランナー
⇒新規でDCや投資をしない方向けのアドバイスであれば、公的年金に関する知識が重要になります。
②まったく年金・社会保障制度の知識がない方
⇒確定拠出年金などの私的年金は、公的年金の基盤があって成り立っています。まずは公的年金を学習しましょう。
<DCプランナーに向いてる人>
①若年層向けのコンサルタント、ファイナンシャルプランナー
⇒これから投資や年金などの資産形成をする方向けのアドバイスであれば、私的年金や投資について深く学習できる方が良いでしょう。
②企業の人事部門担当者
⇒企業年金制度を運用する人事部門担当者は、まさにDCプランナーの知識が必要です。
年金検定2級の勉強方法は?
年金検定2級は、TACにて講座を開講しています。通学・通信対応していますので、ご活用ください。
年金検定2級って役に立つの?どんな業務?
金融業界でお客様に最適な提案を!
銀行や保険会社の窓口には、老後資金に関する相談者が多く訪れます。
そこで重要になるのが、その方の将来受給できる「年金」です。
「このお客様が、これまでいくらの保険料を支払っていて、その結果何歳からいくら受給できるのか」を適切に計算する必要があります。
そのうえで、「お客様にはあといくらの備えが必要か」「そのための商品は何か」を提案するのです。
もちろん銀行や保険会社が取扱う投資商品等の知識も重要ですが、「公的年金」はそれらの前提条件となります。
お客様からの信頼を得るためにも、適切な提案をするためにも、非常に役に立つのが年金検定の知識です。
ファイナンシャルプランナーの必須スキル!
ファイナンシャルプランナーが顧客のライフプランニングを行う際に、いくらの公的年金を受給できるかを計算する必要があります。
顧客は一般の会社員だけでなく、自営業の方や専業主婦の方など様々ですので、年金に関する幅広い知識が求められます。
そのための知識を身に付けるのに、年金検定は非常に適しています。
また、FP試験やDCプランナー試験では学習しない。「受給手続き」や「離婚分割」などのマニアックな知識も、実際のファイナンシャルプランナー業務においては重要になります。
教科書通りにいかないのがライフプランニングですので、より深く学習しても損はないでしょう。
企業の人事部門担当者や社労士のスキルアップに!
一般企業では、給与を支給する際に厚生年金保険料などが控除されていると思います。
そういった業務を行っているのが、人事部門担当者や社会保険労務士です。
企業によって導入している人事システムや業務フローが異なるため誤りやすいところではありますが、もちろん正しく控除計算を行わなければなりません。
一般的な人事システムでは正確に計算されるように仕組みが構築されているはずですが、本当に正しい計算になっているか、イレギュラー要因で計算ミスが生じていないか確認することが必要です。
そういったときに、そもそもの年金・社会保障制度の仕組みを知らないことには確認のしようがりません。
人事システムに組まれている計算ロジック等を、しっかりと正しく確認できるようになれば、人事担当者としての能力としては申し分ないでしょう。
年金問題はいまや他人ごとではない!全国民に役立ちます!
冒頭でも書きましたが、我が国の年金問題が世間を騒がせています。
金融庁が発表した「2,000万円」という数字も、個人個人当然に異なりますし、そもそも年金制度がどのような仕組みなっているか知らないことには対策のしようもありません。
一方で、「年金制度」「社会保障制度」は全国民に関わる制度ですが、現状学校教育で詳細を教わることはありません。
そのため、多くの方が金融庁の報告やマスコミの報道を鵜呑みにするしかなく、「よくわからないけど振り回されている」というのが実情です。
年金検定で「年金制度」「社会保障制度」の仕組みを理解することで、自身のライフプランニングを立てやすくなるだけでなく、今後の制度がどのように向かっていくのかの予測も立てられるようになってきます。
いざ自分が受給するタイミングで「年金受給できなくなりました」と言われる可能性もあります。文句は言えますが、どうにもならないでしょう。
それまでの間に年金制度を理解し、最悪のケースを想定し準備することが大切です。
そのきっかけづくりとして、「年金検定2級」は非常におススメです。
おわりに ~難易度・勉強時間の予測~
いかがでしたでしょうか。
今回は2019年10月に第1回試験を迎えた「年金検定2級」をご紹介しました。
まだ実施履歴がないため難易度は不明ですが、TACの情報やテキストを見る限り、FP3級程度の勉強時間で合格可能かと思います。
計算問題もあるため、ある程度机に向かう時間の確保も必要ですが、知識面は通学・通勤時間や昼休みなどの空き時間をうまく活用していきましょう。
また、同時に同協会が実施する「相続検定2級」もおススメですので、ぜひ検討してみてください。