簿記3級試験2019年6月以降の変更点とその実務 ②資本金・差入保証金
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目次
2.株式会社設立・増資時の仕訳
変更点
従来の試験では「個人商店」を前提としていたため、資本金の払込みは「事業主」がおこなうものとして出題されていました。
改定後は、「株式会社」を前提とするため、資本金の払い込みは「株主」がおこないます。
出題もその前提での設問になると想定されます。
<例題① 設立>
株式会社SSNの設立にあたり、1株当たり10,000円で株式を100株発行し、株主より現金を受領した。
現金 1,000,000 / 資本金 1,000,000
<例題② 増資>
株式会社SSNは増資することになり、1株当たり10,000円で株式を100株発行し、株主より振込まれた。
普通預金 1,000,000 / 資本金 1,000,000
このように、出題文のみの変更で改訂前とほとんど変わりありません。
実務における設立時のフロー(振込により資本金を受領するケース)
昨今の株式会社設立時の資本金については、振込によって株主から払い込まれるケースが大半です。
しかし、振込を受けるには新設株式会社の「銀行預金口座」が必要です。が、口座開設には金融機関に設立後の登記等を提出する必要があります。
そのため、設立日に振込で払い込みをすることが困難なケースが発生します。
そこで実務上は以下のフローで資本金の払い込みを処理します。
<前提>
① 株式会社SSNは2019年4月1日に設立(1株当たり10,000円で株式を100株発行)
② 口座開設後、5月15日に資本金が株主より振り込まれる。
① 未収金 1,000,000 / 資本金 1,000,000
② 普通預金 1,000,000 / 普通預金 1,000,000
口座未開設のため、資本金の払い込みを受けることができませんが、4月1日に株式会社を設立していますのでこの時点で「資本金」を計上する必要があります。
しかし、実際は受領していない(未収)ため、相手勘定を「未収金」勘定にします。
そして、払い込まれたタイミングで、「未収金」を消し込みます。
※ 資本金が振り込まれるまでに外部への支払いが発生した場合、一般的には株主(親会社や経営者が多いと思います)が立て替えます。
株主が立て替えるわけですから、実質的に「資本金」と同義なのですが、「いくら立て替えたか」「資本金はいくらか」を分かりやすく区分するため、株主(立替者)への「未払金」を計上することが一般的です。
3.差入保証金の仕訳
変更点
2019年6月試験から差入保証金の仕訳が追加になります。
差入保証金とは、例えば「事務所の敷金」「駐車場の敷金」「書類保管倉庫の保証金」「セコムの機器保証金」などがあります。
仕訳はそれほど難しくありませんが、実務における「敷金の残高管理」は会計監査上非常に重要な項目になりますので、よく押さえておきましょう。
<例題① 契約時>
本社事務所の契約にあたり、敷金として賃料2ヶ月分600,000円と、初月賃料300,000円を振込によって支払った。
差入保証金 600,000 / 普通預金 900,000
事務所賃料 300,000
<例題② 解約時>
本社事務所の解約にあたり、敷金として差し入れていた600,000円が振込によって返還された。
普通預金 600,000 / 差入保証金 600,000
実務における敷金の取扱い(残高管理)
「差入保証金」は数少ない固定金銭債権であるため、会計監査上その残高の正確性・実在性が問われます。実際には将来返還されないのに、「固定資産」として計上し続けると、「BSをよく見せていた」として「不適切会計」となります。
<差入保証金残高の確認方法>
敷金などの保証金を預けた場合には、預け先から「敷金・保証金預り証」を発行してもらいます。
これは、「甲・乙両者は●●円の保証金を預けていることを双方認識している」ことを証明するものです。
敷金・保証金を預け入れた場合は、必ずこの「預り証」を社内に保管し、期末に帳簿上の残高と照合します。(会計監査の対象となっている法人は、監査法人から提出を求められます。)
<差入保証金勘定の管理方法>
差入保証金を「預り証」と照合しやすくするため、預り証単位で残高を区分します。
この時に使用するのが「補助科目」です。
「補助科目」は「勘定科目」をより細分化して管理するための科目です。
<例題③ 契約時>
A支店の契約にあたり、敷金として400,000円を振込によって支払った。
差入保証金 / 普通預金 400,000
A支店 400,000
<BS残高イメージ>
株式会社SSN 差入保証金残高
差入保証金 計1,058,000円
本店敷金 600,000円
A支店敷金 400,000円
a駐車場敷金 50,000円
トランクルーム保証金 8,000円
このように、差入保証金を「補助科目」で細分化することで、残高確認をやりやすくします。
また、敷金の返還を受けたときに、「帳簿に差入保証金が残っているか」確認しながら記帳する必要があります。