簿記3級試験2019年6月以降の変更点と実務 ①預金勘定

簿記3級試験2019年6月以降の変更点とその実務 ①預金勘定

目次

2019年6月実施試験以降の改定概要

 日商簿記3級試験の出題範囲が大幅に変更されます。
 これまで、日商簿記3級は「個人商店」における会計処理を前提としていました。

 しかし、昨今のビジネススタイルを鑑みて、不適応であると判断され、その前提が「小規模な株式会社」に変更されました。

 さらに、全体的な内容としても、より実務的な会計知識・簿記知識を問う出題が前提となりました。

 たしかに、簿記3級の受験者は、商業系学部の学生や、はじめて会計に触れる若手ビジネスマンが大半を占めています。
 その状況で「個人商店」を前提とした会計処理を入門としていたのは不適切であったといえます。

 まだ初回試験が実施されていませんので、難易度の違いは判りません。しかし、単に資格取得というステータスだけでなく、これから実務に向かう方々への対応としてはとても良い改定であると考えます。

 では、改定点のうち、実務上も非常に重要となるポイントを、実務でどのように処理をおこなうかを交えて、企業会計実務歴約10年になる筆者の解説でご紹介したいと思います。

 

1.複数口座がある場合の預金勘定の残高管理

従来の問題点

従来の記帳方法ですと、預金口座が複数にわたる場合でも、預金勘定が一つにまとまってしまいました。

<例>
期首残高:普通預金1,000万円
 ①三井住友銀行口座から買掛金500万円を支払った
 ⇒ 買掛金 500万円 / 普通預金 500万円
 ②みずほ銀行口座に売掛金300万円の振込みがあった
 ⇒ 普通預金 300万円 / 売掛金 300万円
期末残高:普通預金800万円

 

 実務においては、日次や期末に帳簿と証ひょうを突合し、残高の整合性を確認する必要があります。預金の証ひょうは「預金通帳」「預金残高証明書」になります。

 しかし、「預金通帳」「預金残高証明書」は銀行ごとに発行されますが、従来の記帳方法では、上表のように銀行ごとの預金残高が記録されません。

 「足せばいいじゃないか」と思うかもしれませんが、実際には2口座だけでなく、数10・数100口座保有する企業も多数あります。

 「足す」というプロセスを挟むことで、計算ミスの可能性が高くなります。
 また、「銀行ごとにいくら残高が残っているのか」ということを把握することも、リスクマネジメントとして非常に重要なプロセスになります。

 

変更点

 記帳のタイミングで、普通預金を銀行ごとに区分することになりました。

<例>
期首残高:三井住友銀行1,000万円 みずほ銀行500万円
 ①三井住友銀行口座から買掛金500万円を支払った
 ⇒ 買掛金 500万円 / 普通預金三井住友銀行 500万円
 ②みずほ銀行口座に売掛金300万円の振込みがあった
 ⇒ 普通預金みずほ銀行 300万円 / 売掛金 300万円
期末残高:三井住友銀行500万円 みずほ銀行800万円

 

 

実務における銀行口座別残高管理方法

簿記試験においては、上表のように、

 「普通預金A銀行」

といった表記を使用します。

 しかし、企業会計実務においては、「勘定科目」と「補助科目」に区分して管理することが一般的です。一般的な会計システムにはこれらの機能が備わっています。

<勘定科目・補助科目の例>
 100001 現金       40万円
  0001  本社小口現金   20万円
  0002  A支店小口現金  10万円
  0003  B支店小口現金  10万円
 100002 普通預金     2,300万円
  0001  三井住友銀行   1,000万円
  0002  みずほ銀行     500万円
  0003  三菱UFJ銀行     800万円

 分かりますでしょうか?
 「現金」や「普通預金」といった勘定科目の下層に「本社小口現金」「三井住友銀行」といった「補助科目」がぶら下がっています。

 そもそも簿記で学習する、会計の「科目」とは企業の財務状況を経営者・従業員・株主といったステークホルダー(利害関係者)が把握するために振り分けています。
 そして「科目」を見るときに、状況によって粒度(細かく見たいか粗く見たいか)が変わってきます。

 経営者や株主がその企業の現預金残高を見て財務状況を把握したいとき、銀行ごとの内訳は不要ですよね。貸借対照表で補助科目(銀行別の残高)まで表示されていたらジャマでしかたありません。
 一方、経理担当者が、銀行との取引がどうなっているか、口座別の残高を確認したいときには銀行ごとの内訳を見たいので「補助科目」を参照します。

 このように、簿記試験では「普通預金三井住友銀行」といった形で、1科目として表示されていますが、実務では別項目として管理されることがほとんどです。

 

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