企業活動費の中で、多くの法人が負担・計上している「支払賃借料」。
その「支払賃借料」と一緒に、「共益費」や「水道光熱費」「清掃費」など、ビルの運営費用などがかかってきます。
これらの費用は、法人事業税の一項目である「外形標準課税」の計算の過程で、
区分しておくことにより節税効果が得られます。
そのため、会計仕訳を計上する際に、「共益費」などは区分しておくと、税金計算時に役立ちます。
目次
外形標準課税の対象となる「支払賃借料」とは?
外形標準課税についておさらい
外形標準課税は、法人事業税における税額計算方法の一つで、
対象は、資本金の額(又は出資金の額)が1億円を超える法人です。
外形標準課税の税額算出パターンとして、大きく3種類に分かれます。
① 所得割
② 付加価値割
③ 資本割
①所得割は、法人の所得額によって計算され、
③資本割は、法人の資本金等の額から計算されるため、
この2つは非常にシンプルです。
一方で。②付加価値割は以下の3つの項目から計算されます。
②付加価値割の計算元金額
A 報酬給与額
B 純支払利子(支払利子-受取利子)
C 純支払賃借料(支払賃借料-受取賃借料)
つまり、「支払賃借料」は小さければ小さいほど、事業税負担額が減るわけです。
支払賃借料における「共益費」の取り扱いは?
では、「支払賃借料」における「共益費」の取り扱いはどうなるのでしょうか。
総務省「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」によると、
土地又は家屋の賃借権等に係る契約等において、水道光熱費、管理人費その他の維持費を共益費等として支払っており、賃借料と当該共益費等とが明確かつ合理的に区分されている場合には、当該共益費等は支払賃借料及び受取賃借料として取り扱わないものとすること。(4-4-8(7))
とあります。
つまり、契約や請求書等に「共益費等」が区分されており、
賃貸人・賃借人双方が合意・認識している状態であれば、
「支払賃借料」に含めなくてよい、ということです。
賃貸人は「受取賃借料」に含めてはいけない
注意点は、賃貸人の立場から見ると、
支払賃借料から控除できる「受取賃借料」に含めてはいけない、ということになります。
つまり共益費等を賃借料に含めないということは、国や地方自治体から見ると、
賃借人の支払賃借料が減ることで税収が減り
賃貸人の受取賃借料が減ることで税収が増え
⇒結果、税収は変わらない
※賃借人・賃貸人双方が外形標準課税法人だった場合
ということになります。
共益費の勘定科目は?
外形標準課税の計算のために、共益費を支払賃借料とは区分すべきであることはご理解いただけたかと思います。
そのうえで勘定科目はどうするべきでしょうか?
一般的には、「支払賃借料」とは別に「共益費」という科目を作ることが多いですが、
例えば補助科目などで区分して、税金計算時に金額が算定できれば問題ありません。
また、資本金等が1億円以下で、外形標準課税法人ではない場合には、それほど気にする必要はありません。
おわりに
事業税の外形標準課税のための会計処理は、
税金計算や申告書作成を税理士に完全委任している企業の場合には、
経理部門もそれほど意識することが少ないかもしれません。
しかし、期末の計算時に正しく区分されていないと手間になり、
税理士報酬に影響が出てきます。
また、税理士も人間ですから、計算が複雑になるとミスにつながります。
さらに、税理士によっては「区分されていないから」と、
共益費等も支払賃借料に含めて申告していた、というケースもありえます。
知らず知らずのうちに税金を損していた、ということになります。
そのため、税務に直接かかわらない経理担当者も、
必ず外形標準課税の仕組みを理解し、適切に区分することが求められるでしょう。
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