2019年宅建試験対策 ―法改正ポイント①相続法―

2019年宅建試験対策 ―法改正ポイント①相続法―

 宅建の受験生はもちろん、講師や実務をしている既取得者も気になる2019年の改正ポイントをまとめました。出題されそうなポイント・コンサルティング実務で影響が大きそうなポイントにしぼっておりますのでご留意ください。

目次

1.配偶者の居住権の新設

 まずは配偶者の居住権を保護するための方策になります。2018年に成立し、2019~2020年頃に施行される見込みです。

従来の問題点

 例えば、ご主人所有の家に住む夫婦がいて、ご主人が亡くなった場合を想定してみます。従来ですと以下の問題点がありました。

 A. 他の相続人によっては相続確定までの賃料等を請求されてしまう。
 B. 今後も住み続けるためには相続する必要がある。しかし相続税をキャッシュで支払う必要があり、資金繰り上、相続できないことがある。その場合、転居を余儀なくされる。

 

 

 

改正点

 上記の問題点を解消するため、以下の法改正がなされました。

 A. 相続開始または遺産分割から6カ月間は無償使用可能。
   →とりあえず相続が決定するまでは追い出される心配がなくなりました。
    その後の使用については相続によって決定します。それがBです。

 

 B. 遺産分割・寄贈の選択肢として「配偶者居住権」が増えた。
   →当該建物を取得(相続)しなくても、
    比較的低い評価額※で当該建物を無償使用することが可能になりました。
    ※評価額の計算については複雑なので試験には出題されないと思います。
      実務上は弁護士等専門家にご相談ください。

 

 Bについての補足ですが、当該建物の所有権は相続人が有します。相続しなかった配偶者には無償で住み続ける権利が与えられるわけです。ただし、居住している間の固定資産税は「配偶者」が負担します。

 

 

宅建出題ポイント

引っ掛けポイントは、

「居住権」

であることです。

 つまり、収益不動産は対象外です。例えば当該建物の一部を第3者に賃借していて、賃料を受領しているような場合、その収益の帰属先は配偶者ではなく「相続人」になります。
 生前、収益不動産の賃料収入で生計を立てていたようなケースでは注意が必要ですね。

 

 

 

2.預貯金債権の仮払いを認める

 配偶者や親族の保護を目的とした改正です。こちらも2018年に成立した改正で、2019年7月に施行されます。

従来の問題点

 従来ですと、共同相続人全員の同意がなければ、配偶者や子どもであっても被相続人の預貯金を引き出すことはできませんでした。そのため、以下の問題点がありました。

A. 葬式費用を配偶者や子どもが立て替えなければならない
 葬式費用は相続税法上も「相続財産から控除できる費用」であり、一般的には故人の遺産から捻出します。しかし、改正前ですと「共同相続人全員の同意」がなければ、個人の預貯金を引き出すことができないため、高額な出費を要することになっていました。

 

B. 配偶者や子どもの生活に必要なお金も引き出せない
 例えば一家の生計を立てている者が亡くなった場合、残された遺族(被扶養者)は遺産で生活しなければなりません。しかしそのような状況であっても改正前ですと、「共同相続人全員の同意」がなければ、預貯金を引き出すことができませんでした。

 

 

改正点

上記の問題点を解消するため、以下の法改正がなされました。

遺産分割前に相続人が一定額までは単独で預貯金の払い戻しができる

「一定額」とは一般的な葬式費用や生活費を想定し、

 「相続開始時の債権額 ÷ 3 × 払い戻しを求める共同相続人の法定相続分」
  または
 「金融機関ごとに150万円」
  の少ない方

 

 

 とされています。(実務上は弁護士等の専門家にご相談ください)

 

 

宅建出題ポイント

 払い戻しされた預貯金はあくまで「仮払い」ですので、遺産分割時にはここで払い戻された分も含めて計算されます

 

 

 

3.自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作成可能に

 自筆証書遺言の作成負担を軽減する目的で改正されました。こちらは2018年に成立し、2019年1月13日に施行されています。

従来の問題点

 遺言には「普通方式遺言」「特別方式遺言」があります。「普通方式遺言」には以下3種類の方法があります。

 A. 自筆証書遺言
 B. 公正証書遺言
 C. 秘密証書遺言

 

 この中で、「自筆証書遺言」は自分一人で作成できるため、最も手軽かつ安価で作成できます。しかし手軽だけに、改ざんやねつ造・紛失といったリスクもあるため、様々な制約があります

 その制約の一つとして「本人による手書き」がありました。

 遺言は一般的に「遺言書+財産目録」で構成されます。このすべてを「本人による手書き」で作成しなければならないため、相当な負担となります。また、誤字・脱字により遺言自体が無効となるリスクもありました。

 

 

改正点

 「自筆証書遺言」のうち、「財産目録」のみ自筆以外での作成(パソコン・通帳のコピー等を想定しています)が認められるようになりました。

 ただし、その場合には、全ページに「署名+印鑑」があることが条件です。

 

 

宅建出題ポイント

 ポイントは、

 ①財産目録のみ
 ②全ページに「署名+印鑑」

 

 というところでしょう。
 「遺言書をパソコンで作成した」「財産目録の表紙に署名・印鑑をした」という文章であれば誤りになります。

 

まとめ ―出題時期―

 いかがでしたでしょうか。
 試験対策としてはもちろんですが、実務上も重要なポイントをピックアップしてお伝えしたつもりです。
 今回は、宅建試験対策としてお伝えしましたが、民法・相続法に関しては「ファイナンシャルプランナー(FP)」試験でも関連します。こちらの受験をお考えの方もぜひ参考にしてください。

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