社員に対して、年一度の健康診断・人間ドックの受診を義務付けて、社員の健康維持を促進することは、会社としての当然の責務です。
一般的には健康診断・人間ドック費用は会社が負担します。
では、会社が負担した受診費用は給与に該当するのでしょうか?給与に該当すると、給与課税されてしまい、社員の手取りが減ってしまいます。
給与に該当しない場合、会社の福利厚生費として処理し、給与課税されません。
目次
ポイントは「社員全員」が対象か
国税庁HPによると、以下のように説明されています。
給与等として課税する必要はありません。
役員や特定の地位にある人だけを対象としてその費用を負担するような場合には課税の問題が生じますが、役員又は使用人の健康管理の必要から、雇用主に対し、一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断の実施が義務付けられていることなどから、一定年齢以上の希望者は全て検診を受けることができ、かつ、検診を受けた者の全てを対象としてその費用を負担する場合には、給与等として課税する必要はありません。
<引用URL:国税庁HP「人間ドックの費用負担」>
つまり、「社員全員」を対象にしていれば給与にならず、特定の社員を対象にしていれば給与になるということです。
給与課税となるケース
給与課税になるケースには以下が考えられます。
① 特定の役職以上を対象にする場合
② 特定の職種(総合職のみ、営業職のみ等)を対象にする場合
③ ガン検診など、高額な診療費となる場合
④ 人事規定などで定められておらず、社員に広く浸透していない場合
やはりポイントとなるのは、
▼ 一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断
▼ 検診を受けた者の全てを対象としてその費用を負担する場合
の2点です。
しかし、一方で、
一定年齢以上の希望者
とあるように、年齢での区分は認められています。
課税の判定について、個別の状況・事情により税務署の判断は異なりますので、実際に発生する際には顧問税理士・最寄りの税務署に必ずご確認ください。
社員の健康診断・人間ドック費用の会計処理は?消費税は?
勘定科目は「福利厚生費」科目
医療機関に社員の診療費用を支払うときは、
「福利厚生費」科目が適切です。
なお、仮に特定の社員を対象としており、給与課税されるケースでも、会計上は「福利厚生費」として計上し、別途人事部門と連携し給与課税の対象とします。
ただし、事業税外形標準課税の対象となっている会社は、税額の計算に必要となるため、補助科目などで「給与課税された福利厚生費」かどうか区別しておくと便利です。
消費税:給与課税されない⇒課税 給与課税される⇒不課税
給与課税されない福利厚生費として計上する場合、あくまでも
医療法人からの仕入
に該当しますので、消費税課税の対象となります。課税仕入れとして処理してください。
一方で、給与課税された場合には、
社員に対する給与
になりますので、一般的な給与と同様不課税となります。
配偶者など家族の健康診断・人間ドックを会社が負担する場合は?
会社によっては福利厚生の一環として、「社員の配偶者や家族」の健康診断・人間ドック費用を負担してくれるケースもあります。
その場合はどうなるでしょう。
社員の配偶者や家族の費用負担は給与課税
福利厚生費として給与課税されないための要件としては、その対象が「社員であること」が前提です。
そのため、社員の配偶者や家族の費用負担は、当該社員の給与として課税になります。
社員の配偶者や家族の費用負担は消費税不課税
社員の配偶者や家族の費用は「給与」になりますから、消費税は給与と同様「不課税」として取り扱います。
まとめ
<対象が社員全員>
・給与課税なし
・課税仕入れ
<対象が一部社員>
・給与課税あり
・不課税仕入
<対象が社員の配偶者・家族>
・給与課税あり
・不課税仕入
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、社員の健康診断・人間ドックにかかる費用に関する会計処理について解説しました。
当サイトでは、他にも勘定科目や仕訳などの解説をしています。
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